辞書

 私は国語辞典は専ら電子辞書に収録されている大辞泉を使っているのだが、せっかく紙の辞典を持っているのに使わないのはもったいないと思って机に旺文社国語辞典を置き始めた。なぜ今まで使っていなかったのかと言うと、高校の現代文の授業中に先生が辞書で調べるように指示した言葉が載っていないということが何度か続いたからだ。学校の指定辞書は新明解だったと思うが、私は姉のお下がりをそのまま使っていた。辞書なんてどれも大差ないと思っていたが、学校の指定には意味があったのだと分かった。そういうわけで、私の旺文社国語辞典は外箱以外は新品同様なのだ。すっかり私のなかで信頼を失っていた旺国だが、意外にも日常での調べものに困ることはなかったので油断していた。先日、いつも通り何気なく辞書を引いたら、なんと「砂州」が載っていなかったのだ。電子辞書内の大辞泉、新明解、明鏡には載っている。砂州ってそんなにマイナーなワードかしら。

 しかし、紙の辞書はいいオモチャだ。調べものをする時の寄り道が一番楽しい。この前は、「尊重」を引く→「孫文」を見つける→解説中の「辛亥革命」も掲載されているのかな?→なかったけれど「シンカー」を見つける→他の球種も辞書にあるのかな?→「カーブ」の説明に疑問が生じてYouTubeでカーブの動画を漁る……ということをした。なんて幸せな時間なのだろう!毎日こうして時間を浪費できたらいいのに。

 私が人生で一番使っている辞書はG4だ。現在はG6まで出ているらしいが、買い換える気は今のところない。これも姉のお下がりで、自分で選んだわけではないがかなり気に入っている。もう15年以上前の辞書だが、不便を感じたことがほとんどない。学術的な言葉はそれ専門の辞典を使えばいいだけなので収録語に不満はない。あるとすれば米語優先な点だが、それは他社の英和も同じだろう。先日、何気なくG4を開いたらすごくいい単語(voyeur)を見つけたので、嬉しくなって蛍光ペンを引いてしまった。こういう印をつけたのがリセットされるのが嫌で辞書を買い換えられなかったりする。

 それから私が今はまっているのが子供向けの英語の辞書だ。35000程の収録語数だが、知らない言葉がたくさんある。写真が豊富で見ていて楽しい。例えばabortは載っていないがheiferは載っている。それも写真付きで。ネイティブの幼児になったつもりで、毎日新しい言葉に出会っている。