嬉しいこと

 一念発起して部屋の掃除をした。タンスの上に出しっ放しにしていた服を畳み、本は本棚にしまい、引っ越しからずっと放置していた段ボールの中身を片付け、部屋が広くなった。掃除してから2週間は経ったはずだが、未だに床の上に余計なものはない。掃除機も毎日ではないが、気がついたらかけるようにしている。今までの私からは考えられないことだ。元々部屋を汚くしてしまう性質の人間だったが、お母さんの強制的介入なしに、自分の力で掃除できたのが誇らしい。世間の人にとっては部屋が散らかっていたら片付けようと思うのが普通なのかもしれないが、私はそうではなかった。少しずつでも普通に近づけていることが嬉しい。思えば、アルバイトをする気になったのも、突発的なやる気の沸き上がりによるものだった。私のような人間は一瞬のやる気の脈動を逃してはいけない。

 さて、その掃除中に、音信不通になった文通相手の手紙を思いきって捨てたのだが、先日彼からメールが届いた。タイミングの悪さに笑ってしまうが、捨てずに机の引き出しにしまったままにしていたら今も音信不通のままだったような気がする。

 

 最近、英単語の暗記に取り組んでいる。大学受験や資格試験のために一生懸命英語を勉強した人も多いと思うが、私はみんなが頑張っている時に怠けていたので、今になって英単語を覚える羽目になっている。と言っても、義務的にやっているわけではなく、自発的にだ。記憶力があった10代の頃にしっかり勉強しておくべきだったが、それが分かっていても中々やる気になれないから、部屋が汚かったのだ。私は辞書を引くことが苦ではないので、読書中に何十回も調べてしまい、全くページが進まないということがよくある。だから辞書を引く回数を減らしてもっと多くの本を読めるようになりたいと思ったのだ。日本語さえも怪しくて国語辞典を手放せない人間が、英語をスラスラ読めるのかという疑問はあるが。しかしながら、英単語の暗記はやはり効果があるようで、ニュースや小説を読むときに辞書に頼る頻度が減ったし、ニュースのポッドキャストを流し聴きしていても内容が頭に入ってくるようになった(以前は「よし!今から英語を聴くぞ!」という戦闘態勢に入らなければほとんど聞き取れなかった)。成長が実感できると、退屈な暗記も頑張ろうと思える。最終的には40000語レベルに達したい。NTTの日本語語彙テストみたいなもので私の結果が82000語くらいだったので、それを目安にしてみた。

 

 努力すれば大抵のことはどうにかなるのかもなと思うようになってきた。これまでの人生でがんばったことなんかないし、精神科通いをするようになってからは発達障害精神疾患のせいにして怠けていたので、今は人生を取り戻している最中だ。人生は自分でコントロールできるのだという自信が漲ってきた。本当に元気になったのか、ビョーキの一環なのか分からないけれど、少なくとも引きこもりだった時よりも今の自分の方が私は好きだ。