例外

 必要に迫られてフランス語の勉強を始めた。フランスに興味はないし、フランス語圏にも興味はないけれど、必要だから勉強しなければならない。まあ、勉強してフランスの料理の本でも読めるようになったらほんの少しは自分の楽しみにも繋がるかな。そう思って昨日から勉強を始めたのだが、第一章アルファベでもう躓いた。これはスペイン語の時もそうだったのだが、英語とは違うABCの読み方を覚えるというのは簡単なことのように思えてすごく難しい。テキストには親切にも?カタカナで発音が書かれているが、CDから聞こえるフランス人の発音と一致していない気がする。とりあえずカタカナは無視して自分の耳を信じてABC……とCDに続いて発音していくが、何度聞いてもRの発音が分からないから、テキストを見ると「エール」と書かれていた。いや、絶対に「エール」ではない。「エー」までは分かるけれど、確実に「ル」ではなかった。なんかこう、喉の奥から牛のゲップと溜め息が混ざったような音をさせている。アルファベをそのまま読む機会なんてそんなにないだろうし、とりあえず次に進むことにした。しかし、先に進んでもRの奇妙な発音は付きまとってきた。フランス語を話せるようになる必要はないし、読めさえすればいいのだから、発音は無視して勉強を続けようかと悩みもしたが、やはり音読ができないと効率的な学習の妨げになる。そういうわけで、Rの発音を体得できるまでは、フランス語の勉強は休憩だ!
 フランス語を少しやってみて気づいたが、やっぱり外国語って楽しい。今となっては道具でしかないけれど、中学で英語を習い始めた頃は、パズルみたいでおもしろかった気がする。そういう懐かしさに誘われて、もう一度英語を勉強してみようかなと思った。もうずっと決まりきった表現しか使わずに過ごしているので、随分たくさんのことを忘れてしまっている。BBCのサイトで興味のあるニュースを読んで、そこから文章の書き方を学ぶことにした。数ヶ月返信していないメールがずっと頭の片隅にあるから……。ニュース記事を読んで言わんとすることは理解できても、文章の細かい部分に理解できないところがいくつかあった。辞書や文法書をひっくり返しても知りたいことが書いていない。ネットで検索したら、私の疑問というのは、研究者が論文一本書けちゃうようなものだったので、ほっとした。
 いくつかの言語を勉強して、その度にいつも、完全にシステマティックな言語を誰か創造してくれないかなあと思うのだが、今日ようやく気づいた。言語というのは人々が使っているうちに変化を遂げていくのだから、たとえ人工的に生み出された時点ではシステマティックであっても、時の経過と共にそうではない部分が生じてくるのだろう。国語辞典が言葉の意味を決めているわけではないということを思い出した。語彙に限らず、言語の他の要素もきっとそうに違いない。