拠り所

 久しぶりに酒を飲んだ。1万円くらいの、アルマニャック。本当に久しぶりだったから控え目にしておこうと思ったけれど、自制するまでもなかった。開けてから半年以上経っているからか、口に含むと媚びるような甘さの後に古新聞の味を感じた。古新聞の後にまた甘みを感じ、最後はブックオフの店内になった。古本、古着、オタクの体臭。それでもドライフルーツをつまみながら飲むとブックオフは少し薄れた。残った酒はブランデーケーキに使う。酒はおいしいけれど、私は酒を飲むべきではないのかもしれない。飲んでも楽しくなるわけでもないし、嫌なことを忘れられるわけでもない。おいしいというだけなら、コカ・コーラでも飲んどけばいい。酒が飲める年齢になって助かったことと言えば、何かあったときに、酔っ払っていたことを言い訳に使えることだろうか。本当は少しも酔っていないのに、そう言うと、大抵の人間は理解してくれる(気がする)。
 葉巻もずっと吸ってない。この前、映像の世紀の再放送を見たが、映像に残るチャーチルは基本的に葉巻を手にしていた。それで、久しぶりに吸おうかなと思った。高いのは勿体なくてずっと手をつけていないけれど、そうこうしているうちに、今日飲んだアルマニャックと同じことになりそう。でも、先月だったかな、炭火で黒焦げになったシシトウを食べたらコイーバのエッセンスを感じた。もう葉巻なんていらないじゃんと思った。
 酒も葉巻も以前ほどの興味がなくなった。それどころか、スポーツや映画、アニメなんかにも情熱を注げなくなった。一番ショックだったのは、小学生の頃夢中になったブルース・リーの映画を見たら、もうかっこいいと思えなくなっていたこと。興味の消失はスマホでインターネットばかりしているせいかと思ったけれど、最近の私はスマホを手にしても、特にすることもなく、握りしめているだけ(不思議なことにそれでも時間はどんどん溶けていく)。ごく稀に他人と話すと頭が働かないし、変なことを口走る。それから、愛想笑いをするだけで、頬の筋肉が痛くなる。人として本当に終わりだよ。最近はヤフーのトップニュースすら見たくない。まだ生きていることが恥ずかしいから。とにかく、左の乳首が猛烈にかゆい、